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食用ほおずき
'11年 08月 15日
赤橙色に色づいたほおずきは、遠くから見るとまるで小さな提灯をいくつもともしているかのように見えます。ほおずきを漢字で書くと「鬼灯」。ここでの「鬼」は「目に見えない霊魂」という意味があります。盂蘭盆(うらぼん)のころに熟すことから盆花として飾られることも多いほおずきは、先祖の霊をお迎えする灯(迎え火)にも見立てられているのです。
さて、このほおずきに食用のものがあるのをご存知でしょうか。
食用ほおずきは、私たちが一般的に目にする観賞用ほおずきのような鮮やかな橙色ではありません。和紙のような風合の茶色い袋の中から現れるのは、黄みががった橙色の果実。ミニトマトほどの大きさで、姿は鑑賞用のものとそっくりです。皮がぷちっとはじけて、果汁と果肉が口に広がる食感は、見た目どおりミニトマトによく似ていますが、トマトよりも甘みが強く、ベリー系の奥深い香りが特徴です。その味から「ほおずきトマト」や「フルーツほおずき」「ストロベリートマト」という名前でも呼ばれるほか、学名である「フィサリス」という呼び方もされています。フランスでは「アムール・アン・ガーシュ(愛の籠)」という呼び名もあるそうです。
あまり市場には出回りませんが、ここ数年有名パティスリーやレストランで、ケーキの飾りやチョコレートをコーティングしたデザートとして見かけることが増えてきました。酸味があるのでジャムにしてもおいしくいただけます。ちなみにほおずきは「鬼灯」のほか「酸漿」という漢字表記もされます。「漿」は粘性の少ない液のことを表しますが、酸味は黄色味の強いものほど強く、甘味はオレンジ色の濃いものがより強いようです。
食用ほおずきにはイノシトールというビタミン様物質が含まれています。ビタミン様物質とは、ビタミンと似た重要な働きをするが、体内合成量で充分にまかなえるため欠乏症が起こらないという理由でビタミンとは区別されているもののことを言います。欠乏症がないとはいえ疾病予防や健康維持に役立つもので、イノシトールに関しては脂肪肝予防に効果があるといわれています。その他抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンA・C・E(エース)も含まれた栄養価の高い食用ほおずきですが、一度にたくさん食べるものではないので、健康のためというより見た目の愛らしさを楽しむ食材といえるでしょう。初めて見る人は「食べられるの?」と必ずや驚き興味を示すに違いない食用ほおずきは、ホームパーティーの手土産にも最適です。デパートや高級スーパーのほか、通販でも手に入ります。
参考文献 ブックマン社 「野菜を、食らう」
文:野菜ソムリエ 高野和子
アレンジ:国家検定一級フラワー装飾技能士 野田徳子
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