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映画やドラマで見かける欧米の朝食風景といえばトーストとサラダ、それからオレンジはつきものですよね。日本では手で皮のむける温州みかんやデコポンが人気ですが、欧米ではナイフで切り分けて食べるスタイルが主流なようです。でもほんの100年ほど前までは北アメリカや北ヨーロッパでオレンジは日常的なものではなく、とても貴重な果物だったのです。
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カリフォルニアやフロリダが産地として有名ですが、実はインドから中国南部の亜熱帯地方が原産地のオレンジ。アジアでは古くから栽培されていましたが、西洋に伝わるまでには長い年月がかかった「新しい果物」なのです。オレンジが高価な果物だった時代の北ヨーロッパでは、オレンジを寒さから守るための温室である「オランジュリー」を建設することが、金持ちの間のステイタスでした。
ちなみに1952年ナポレオン3世が建設したオランジュリーを改装して作られたのが、かの有名なクロード・モネの「睡蓮」が収められているパリの「オランジュリー美術館」です。ガラス天井から降り注ぐ光は、広大なキャンバスに描かれた「睡蓮」の色彩に息吹を与えます。光と色彩を生涯に渡り追求してきたモネにとって、またモネが描く印象派絵画にとってオレンジ温室は最高の空間でした。
さて、生食だけでなくジュースやジャムの加工に向いているオレンジは世界の柑橘類の中で最も生産量が多く、その生産加工業は巨大なビジネスとなっています。
とはいえオレンジとひとくちに言ってもその種類は実にさまざまです。オレンジは大きく「普通オレンジ」「ネーブルオレンジ」「ブラッドオレンジ」の3タイプに分けられます。「普通オレンジ」はバレンシアオレンジが最も栽培されており、ジュースに大変適しています。日本でも今が旬の福原オレンジという品種がわずかながら作られています。
「ネーブルオレンジ」はてっぺんにおへそ(ネーブル)がある特徴的なオレンジで、糖度が高いのですが、苦みもあるのでジュースにはあまり適しません。日本でも多くの品種が栽培されています。「ブラッド(血)オレンジ」は果肉が赤く染まっているのが特徴です。この色はアントシアニン色素によるものです。
さらに、オレンジとその他の柑橘類(みかん・文旦・グレープフルーツなど)の交雑により、さまざまな雑種オレンジが誕生しました。清見やデコポン、タンカン、セミノールなどスーパーにはさまざまな種類の柑橘類がありますが、これらはすべて雑種オレンジとなり、今回のアレンジ写真に使用しているマーコットもその一つです。
オレンジは品種のいいとこどりをした交配種が次々生まれ、数多くの品種が春先の店頭を賑わせています。酸度・糖度・皮のむきやすさ・果汁の多さ・果肉の緻密さなど嗜好を左右するものは人それぞれですので、食べ比べてみると個人差があり楽しいですね。
さてここで透視マジックをひとつ・・・テーブルにあるオレンジの皮をむかずに中の袋の数を当てて差し上げましょう。
オレンジ類(大きいものならなおよし)のヘタを取ると、点々が見えます。これは維管束で枝から実へ栄養を送る管なのです。ひとつひとつが袋につながっているので、この点々の数=袋の数というわけ。小さいオレンジ類は虫眼鏡がないとよく見えないかもしれませんが、お子さんと楽しんでみてくださいね。
文:野菜ソムリエ 高野和子
アレンジ:国家検定一級フラワー装飾技能士 野田徳子
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