コラム一覧へ オリーブ '11年 04月 01日
地中海沿岸地方で古くから栽培されているオリーブ。日本では明治政府の施策のひとつとして、栽培適地とされる温暖な地域で試験が重ねられました。その中で唯一栽培に成功した香川県の小豆島が、現在でも国内有数の産地として知られています。



オリーブには苦み成分が多く含まれており、生では食べることができません。そのためアルカリ処理で苦み成分を取り除いてから塩漬けにするほか、果肉の部分にたくさん含まれる油を搾り出してオリーブオイルとして利用します。世界には1000種を越えるオリーブの品種があります。油の含有量は品種によって異なり、一般的に含有量の多いものがオイル用に、少ないものが塩漬け用に使われます。

生の果実はなかなか目にすることはありませんが、塩漬けの実に2種類の色があることはみなさんご存知でしょう。「オリーブ色」と表現される、暗くくすんだ黄緑色のグリーンオリーブ、そして黒いブラックオリーブ。この二つは品種の違いではなく、熟度の違いにあります。オリーブの木はモクセイに似た芳香のある黄色みをおびた白い花をつけます。花が終わってつく実は緑色をしています。それが黄緑色、赤紫色、紫色、黒色と色を変化させます。緑色のオリーブは未熟な実、黒いオリーブは熟した実というわけです。また熟すにつれ、油の含有量が増えていきますが、オレイン酸・リノール酸などの機能性成分は減少します。オリーブオイルの色づき具合を比べてみると、緑色の果実を絞ったものは若草色をしており、熟した黒い果実を絞ったものほど黄色味が強くなります。若草色のものは若々しくフルーティですが、若干えぐみがあるのは未熟果である緑色の果実を絞ったものだからでしょう。完熟果の黒いオリーブを絞った黄色いオイルはまろやかです。
ちなみにこれはオリーブの実をそのまま絞った「バージンオリーブオイル」での話であり、安価で手に入りやすい「ピュアオリーブオイル」は黄色いのですが、搾りかすから再びオイルを抽出し精製したもので、製造工程が異なるので比較対象にはなりません。風味と香りの強いバージンオリーブオイルは、そのままパンにつけたり、サラダのドレッシングにしたり、アイスクリームにかけても美味です。



さて、オリーブは国際連合旗やいくつかの国の国旗に描かれるなど、平和の象徴としても知られています。これは、旧約聖書「創世記」に書かれた有名な「ノアの箱舟」の伝説がもとになっています。欲にまみれた人類の堕落に怒った大神ゼウスは、人を作ったことを後悔し、悪で埋め尽くされた地球上のすべてを洗い流そうと、大雨を降らせ大洪水を引き起こしました。唯一正しい行いをしていたノアとその家族だけが生き残り、箱舟を作ることを許され、150日ものあいだノアは箱舟の中で過ごします。そして外の様子を知るため、ノアは箱舟からハトを放ちます。やがてハトはオリーブの枝をくわえて戻ってきたのです。ノアはこのオリーブの枝をくわえたハトを見て、水がひいて陸が現れ、地上に平和が戻ったことを知ったのです。ハトもまた平和の象徴とされるのは、この伝説によると言われています。

私は今回東日本を襲った未曾有の大災害のあと、この箱舟の話を思い出しました。地震も津波も決して人災ではありません。そしてそれによって引き起こされた原発事故が人災だと言い切ってしまうのは憚られますが、原発は間違いなく人間によって作られたのです。この原発事故により、私たちはそれまで過ごしていたごく普通の毎日が、決して当たり前のものではないことを知りました。恵まれた環境に感謝の気持ちを持つことすら忘れていたことを知りました。これは、現代の私達人間へ与えられた試練だと言われれば、そうなのかもしれない、と自分を納得させています。しかし原発が未来へ遺した傷はとても深く、試練としてはあまりにもむごすぎます。
そして今は、ただ日本に再び平和が戻ってくること、それだけを願っています。オリーブをくわえたハトを見つけたノアのように、一筋の希望の光を見出せる時が必ずやってくることを信じてやみません。

文:野菜ソムリエ 高野和子
アレンジ:国家検定一級フラワー装飾技能士 野田徳子


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