コラム一覧へ 青パパイヤ '11年 08月 01日
昨冬話題となった映画「ノルウェイの森」の監督・脚本家であるトラン・アン・ユン。ベトナム出身である彼の処女作品「青いパパイヤの香り」は、1993年度カンヌ映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受賞するなど高い評価を受けている作品です。この中に、何度も登場しているのが青いパパイヤを使ったサラダ ・・・



ある資産家宅に使用人として雇われた主人公の幼い少女が、年配の使用人にサラダの作り方の手ほどきを受けるシーンがありますが、当時この作品を見た私はパパイヤの斬新な切り方に目を奪われ、一体どんな味なのか、どんな香りなのか、と未知なる食材にあれやこれやと想像を膨らませていました。

それから数年後、私はこの青いパパイヤのサラダを現地で実際に食べることとなります。千切りにした青パパイヤにピーナッツ、海老、パクチー。ヌクマム(魚醤)ベースのドレッシングはさっぱりとして、いくらでも食べることができます。青パパイヤのしゃきっとした食感、意外なほどくせのない味と香りにすっかりやみつきになり、今でもタイ・ベトナム料理店では必ず注文するメニューのひとつとなりました。数年前まで関東近郊では青パパイヤはなかなか手に入らず、どうしても自宅で再現したかった私は、大根の皮や冬瓜で試していたものですが、最近では特別なお店に行かずとも、通販やデパ地下などで比較的容易に手に入れることができるようになりました。

青パパイヤの切り方にはちょっとしたコツが必要です。まず、縦半分に切り白い米状の種を取り出します。手がかゆくなるので、気になる場合は手袋をしたり、水を張ったボウルの中で種をこそげ取ります。皮はアクやえぐみが強いので厚めにむきます。映画の中では、皮をむいた身にナタ包丁で縦に切れ目を入れてから横に薄くスライスしていくのですが、まな板を使わないこの切り方には練習が必要かもしれません。もちろん通常の千切り方法でもよいのですが、身がかたいので包丁よりもスライサーを使うと便利です。
また加熱しても食感が残り、おいしくいただけます。沖縄では炒め物を「パパイヤイリチー」、味噌煮を「パパイヤンブシー」と呼び、一般家庭でもよく食べられています。いずれの調理法でもアクを抜くためにしばらく塩水につけておきます。

木からもぎ取ると、パパイヤの切り口から白い樹液が滴ります。皮の表面を傷つけても滲んでくるこの液はたんぱく質分解酵素で、肉と一緒に調理すると肉が柔らかくなると言われています。また触れたときにかゆみを感じるのはこの酵素成分によるもので、成熟したパパイヤより青パパイヤのほうが酵素の力もずっと強いのです。
ところで沖縄では「産後の女性が青パパイヤを食べると乳の出がよくなる」と言い伝えられてきました。医学的な根拠はありませんが、白い樹液が母乳を連想させ、たわわになる実がふくよかな胸の象徴と見なされているのかもしれませんね。
トラン・アン・ユン監督の作品はどれも叙情的な映像美に溢れています。「青いパパイヤの香り」でパパイヤが登場するシーンでは、流れるような映像の中にエロティシズムを感じます。直接的な描写がないにもかかわらず、見る側になまめかしさを感じさせるのです。対して「ノルウェイの森」では官能的表現でさえも絵画のような景色に自然と溶け込ませてしまう・・・見る者を惹きつける監督の手腕は、さすがとしか言いようがありません。

文:野菜ソムリエ 高野和子
アレンジ:国家検定一級フラワー装飾技能士 野田徳子


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