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バレエ作品の題材として有名な「くるみ割り人形」は、ドイツの伝統的な工芸品です。兵隊さんの形をした人形の口にクルミを入れ、背中のレバーを引くとクルミが割れる仕組みになっています。ただ実際に綺麗に割れるかといえばそうともいえず、実用品としてよりも飾りものとしての意味合いが強いものです。一般的に頑丈なクルミの殻を割るのに用いられているのはペンチのようなくるみ割り器で、ホームセンターなどで手に入れることができます。
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茶色いごつごつとした丸いクルミの殻ですが、この姿のまま木になっているわけではありません。秋になり大きくなった実は茶色ではなく緑色。それがまるでぶどうの房のようにいくつも連なっています。しばらくすると地面に落ちてくるのですが、これを足で踏み潰すと中からお馴染みの茶色いクルミの殻があらわれます。その中に私たちが食用としているいびつな形をしたクルミが入っています。この部分を正式には「仁」といい、種子が成長していく部分の「胚」と発芽時の養分である「胚乳」が含まれます。クルミは栄養豊富な食材として知られていますが、成長のための栄養分があの小さなクルミの中にぎっしり詰まっているのですから当然なのかもしれません。ただしたんぱく質と脂肪がとても多くエネルギーも高いので、おいしいからと言って食べすぎには注意しましょう。また、クルミを割る前にフライパンで炒っておくと、先端が少し開き割りやすくなります。
殻つきのものからひとつひとつクルミを取り出すのは大変ですから、調理に使うときは剥いた状態のものを使うのが便利です。市販されている剥きクルミの多くは、ペルシアグルミやその変種のテウチグルミなど栽培種の輸入品です。国内ではペルシアグルミから改良されたシナノグルミが長野県で栽培されており、地元では蕎麦のつけだれやクルミ味噌、クルミ餅などに利用されています。日本に自生しているクルミはオニグルミとヒメグルミという品種で、古くから食用にされてきました。一時「縄文クッキー」という縄文時代の遺跡から発見された食べものが話題になりましたが、この材料にクルミなどの木の実が用いられていたという説もあります。オニグルミやヒメグルミは実は小さめで殻も硬く割りにくいのですが、味はペルシアグルミに劣らず大変濃厚です。剥きグルミは生のものとおつまみとして塩味がついたものがありますが、お菓子作りや料理には生のものを使います。そのままでも問題はありませんが、低温のオーブンでローストすると香ばしくカリっとなります。お菓子やパンの生地に混ぜるときも、クルミの水分を飛ばし生地のべたつきを防ぐためにもローストするとよいでしょう。
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ところで、昔からクルミの木の下は他の植物の育ちが悪いことが知られています。その原因とされているのがクルミの幹と葉から分泌されているユグロンという化学物質。この化学構造は除草剤の一種に似ており、小さな植物なら殺してしまうほどの威力があるそうです。クルミの持つ自己防衛力には驚かされます。そしてこうした作用はクルミだけでなくサクラやマツ、ユーカリなどの多くの植物が持っているのです。人間や動物と違い植物は力で相手を封じ込めることはできません。武器を持てない代わりに植物が手に入れた沈黙の化学兵器ともいえますね。
文:野菜ソムリエ 高野和子
アレンジ:国家検定一級フラワー装飾技能士 野田徳子
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