コラム一覧へ 芽キャベツ '08年 03月 01日
よい結果になりますようにと祈るためのもの、つまり「縁起物」。縁起がよいとされ、正月や祝い事に用いられる「縁起物」の食材はたくさんあります。
先が見通せる「レンコン」、代々繁盛する「ダイダイ(柑橘類)」、大願を成す「ナス」、芽が出る「クワイ」。その中で「メキャベツ」もまた縁起物だということはあまり知られていないかもしれません。それが縁起物であるというゆえんは生育中のメキャベツの姿にあります。



収穫される前のメキャベツを初めて見た人は、きまってその姿に驚き、同時に「かわいい」「おもしろい」「こんなふうになってるの!?」と歓声をあげます。太くなった茎の地面に近い部分からくるりと丸まったメキャベツが、鈴なりにびっしりとくっついている様子はなかなか見ごたえがあります。その状態からメキャベツには「子持ちカンラン(カンランはキャベツの意)」という別名があるのです。子孫繁栄の縁起を担ぐ野菜なのですね。姿かたちはまさにキャベツのミニチュアなのに、畑にドンと鎮座するキャベツとは似てもつかないさまです。キャベツの若いまだ小さい段階でとったものだと思われている方も多いでしょう。その予想をいい意味で裏切るのがメキャベツです。
ところで今から20年以上も前に「キャベツ畑人形」というものがアメリカで大ブームになったのを覚えている方はいるでしょうか。キャベツの形をした人形ではなく、いたって普通の、いや少し顔が不恰好でいかにも「アメリカン」な人形です。日本ではかわいくないとあまりウケはよくありませんでした。実は欧米では「赤ちゃんはキャベツ畑で生まれる」という言い伝えがあるのです。そこから生まれたキャベツ畑人形は本ものの赤ちゃんのように、アメリカの人びとに親しまれたのです。
このキャベツ伝説が生まれたのはまだキャベツが今のように結球していなかった時代だといわれています。13世紀にイギリスで結球キャベツの記録がありますので「赤ちゃんはキャベツ畑で生まれる」というのはかなり古くからの言い伝えということになります。一方メキャベツはベルギーで生まれたといわれており、ヨーロッパ全土に伝わったのは19世紀、アメリカへはさらにもう少し後という比較的新しい野菜なのです。メキャベツが伝説の主役になるには少し時代が合わなかったようです。このころの人々がミニチュアキャベツをたくさんつけたメキャベツを見たらどんな歓声をあげたでしょうか。たくさんの子を抱える母のように見えるメキャベツが、キャベツから分化して生まれたものだなんて興味深いではありませんか。そしてそれが「赤ちゃんはキャベツ畑で生まれる」という、なんともロマンチックな言い伝えをさらに神秘的なものにしていると感じるのは私だけでしょうか。
キャベツに比べ水分が少なく、濃厚な旨みと特有のほろ苦さがあります。煮込み料理やグラタン、バター炒めなど、どちらかというと西洋料理にあうイメージですが、和風ポトフや漬物など幅広く使える野菜です。苦味とアクがありますので、一旦下ゆでしてから使います。火が通りやすいように、包丁で根元に十字の切れ目を入れておきます。サラダに入れるときも、歯ごたえを失わない程度にゆでてから使いましょう。
小さくてもパワーは絶大です。カロテンやビタミンCなどの主要ビタミン含有量は、普通のキャベツの数倍。「縁起物」として特別な日にいただくだけでなく、ぜひ普段の食卓にも取り入れたい野菜ですね。


文:     ベジタブル&フルーツマイスター 高野和子
アレンジ:国家検定一級フラワー装飾技能士   野田徳子



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